贈与を活用した不動産の取得について④
不動産あるある相続時精算課税制度の活用方法
財産価値の増加を相続財産の増加に影響を与えない相続時精算課税制度という制度があります。相続時精算課税制度と聞くとあまり馴染みがない方も多いと思いますが、簡単に言うと、生前の贈与については2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、2,500万円を超えた贈与に対して一律20%の贈与税がかかります。贈与者が亡くなった時、今まで贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税を計算し、以前に納付した贈与税を差し引いて相続税を納付する制度です。
この制度は、贈与者が亡くなった時に相続税を納付するため、一見意味がないように思われますが、使い方によっては大きな節税効果が期待されます。
[例]夫婦で小さな会社を経営しており、安定収入を得たいと夫婦共有で都心の一等地にマンションを1室購入し、賃貸する計画を立てています。子どもは1人美術大学に通っています。父は、子どもの将来について、今の会社を継がせる意思はなく、好きなことをしてほしいと考えています。しかし、親として安定した収入を確保してあげたいという気持ちから、このマンションはいずれ子に託したいと考えています。
●家族構成
父:会社経営 50歳(戸建所有)
母:夫の会社の役員 48歳
子:1人 22歳
●マンションの購入価格
1億円
この例の場合、相続時精算課税制度を利用しようとした場合、夫婦それぞれがこの制度を利用することができるため、2,500万円分ずつ、合計5,000万円を子に生前に非課税で贈与することができます。
この相続時精算課税制度のメリットは、この都心の一等地のマンションが将来値上がりした場合でも相続時精算課税制度を利用して贈与した1人2,500万円の価値のままで、相続税の計算をするため、マンションが値上がりしてマンションの価値が増加しても、相続税の増加の心配はないということです。
ただ、逆に値下がりしても当初の2,500万円での相続税の計算をしなければいけないため、この制度を利用しなかったほうが、相続税が低く抑えられたというケースも考えられるため、相続時精算課税制度を利用については慎重に検討する必要があります。
<メリット>
・不動産等の値上がりによる相続税の増加を、生前に食い止めることができる可能性がある。
<デメリット>
・相続時精算課税制度を利用した場合、暦年贈与非課税枠は利用できなくなる。
・小規模宅地等の特例が使えなくなる。
・価格変動により不動産等の価値が減少した場合(相続税が減少)でも、制度を利用した時の価格で相続税を払わなければいけない可能性がある。
今回紹介した制度はどれも、一定の要件や、将来の不確定な要素があるため、不動産の専門家や税の専門家と相談のうえご利用されることをお勧めいたします。
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